インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2016年22号
―アニメ化で再認識したのは、香子というキャラクターが物語にとっても主人公の零にとっても、キーパーソンだということです。
新:香子は要所要所でいっぱい出てきますよね。
井:零ちゃんがいっぱい回想でも思い出してくれるので。零ちゃんのおかげです、ありがとう(笑)。
河:いやいやいや…(笑)。
井:でも、演じていて毎回楽しいです。
河:他の作品では、役そのものが楽しいキャラクターもやっているんでしょう?
井:確かに新房監督の作品の時は暗い役が多いかもしれません。暗いヤンデレばかり(笑)。
―『まりあ†ほりっく』はジャンル的にはラブコメディかと思いますが、井上さんの演じていた汐王寺茉莉花は…?
新:あのキャラもおかしいですよ(笑)。
井:あんまり明るい役をやらせてもらえないんです(笑)。
―新房監督と井上さんは『コゼットの肖像』からの長きに渡って色んな作品でお仕事なさっていますね。
井:そうなんです。自分のデビューからのお付き合いで。
新:あのときのキャラからそうでしたね。『絶望先生』もそうですよね。
井:あのキャラもヤンデレですね(笑)
―几帳面で粘着質少女な木津千里ちゃんですね。
新:途中から、句読点とかも全部入るようになりましたから(笑)。
井:ありました! 覚えています。
新:香子も句読点を入れます? ギャグとして。
一同:爆笑
―他のキャラのエッセンスが、香子さんに入っていくという(笑)。
井:でも、家族にまつわるエピソードのシーンとかを演じると、(『〈物語〉シリーズ』の)老倉さんを思い出します。二人ともすごく孤独なんだろうなあ、こんなことを老倉さんを演じたときにも言ったなあ、と。
―まさに『〈物語〉シリーズ』をご覧になっていた羽海野さんの中に、老倉さんと香子さんは重なるイメージがあったので、ぜひ井上さんに演じていただきたいという希望がありました。
羽:小説を読んでいると西尾(維新)さんが老倉さんを大好きなのが伝わったし、アニメを見ていると新房さんが老倉さんを大好きなのが伝わったんです。老倉さんはこんなにいろいろと言ってしまったらみんなに嫌われてしまうのでは…と思ったのに、全然愛されている!と分かって。香子ちゃんも零ちゃんはずっと気にかけているので、嫌われちゃうような声だと成立しなくなってしまうから、井上さんにいじわるなのに憎めない声を出していただかなきゃ!ってなりました。
井:ありがたい限りです。
羽:私が老倉さんで!とお伝えしたら、新房さんも二つ返事でそうだねって。
新:はいはいみたいな?(笑)
羽:はいはいも、はいが二つだから二つ返事なのか…?(笑)
井:私は羽海野さんの作品が、元々ハチクロのときから大好きだったんです。
羽:わあ、嬉しいです。
―香子さんのキャスト発表時にも、すごく熱いコメントをいただきまして。
井:そうなんです。『3月のライオン』もアニメ化するという話はなんとなく伝わってきて、どうしても出たくて、でも出られなかったら悔しくて、家に漫画はあるんですけど、読めなかったくらいなんですよ。女子のキャラが少ないじゃないですか。だから、これは自分は出られないんだろうなって、ツンデレみたいになっていました(笑)
―ところで羽海野さん、アフレコでもとりわけ河西さんと井上さんのやりとりには…。
羽:私はこのお二人のシーンを見ると、いつもはわわ~ってなります。
一同:爆笑
羽:実際、声で聴くとより、大変!いろいろあったに違いないってなります。
井:いろいろあった感めっちゃ出しました。零ちゃんと香子のシーンは、アフレコブースに二人だけっていうときもあって、さらにその感じが増す感じです。
河:確かにそうですね。
―普段のアフレコでは、あまりないシチュエーションですか。
井:なかなかないですね。二人だけのシーンを、実際にアフレコでもそうしていただけたのは、演じやすかったです。
―羽海野さんとしては元々イメージ通りとご希望なさっていた河西さんの零くんと井上さんの香子さんですが、実際演じていただいて、ますますその思いは強くなっていらっしゃいますね。
羽:ええ、原作者なのに慌てふためかされています。
河:そういえば、いつだったか、僕がとちってアフレコの収録が中断したときに、先生のキャーという声が僕らのブースにまで聴こえたことがありました(笑)
羽:すみません、改めて声で聴かされて、あまりに照れくさくて。でも、キャラクターに音声がついて話し出すと、私の中で違うお話がまた出来るんです。アニメのスタッフの方々が色をつけて動かして下さって、キャストの方々が声をつけて下さると、作中では描いていませんが、本当はこういうこともあったかもしれないとか、自分の頭の中でもお話が広がるから、メディアミックスのときは、それがとても楽しいことです。