インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2016年5号
漫画家。デザイナー、イラストレーターなどを経て、2000年、『ハチミツとクローバー』でデビュー。2007年より『3月のライオン』をヤングアニマル(白泉社)にて連載中。
アニメ監督。2005年以降、シャフトを制作拠点に、活動中。代表作に『〈物語〉シリーズ』『魔法少女まどか☆マギカ』『荒川アンダー ザ ブリッジ』(いずれも制作シャフト)など。
―発表前より、シャフトさん、新房監督、アニプレックスさんに、羽海野さん、我々白泉社原作サイド、放送局のNHKさんで、シナリオ会議をはじめ、制作はずっと進めておりましたが、1月7日にそちらが公表されました。まずは今のご心境を、お聞かせいただけますでしょうか。
新房(以下、新):これは言ってはダメなのかもしれないけど、反応が気になります (笑)。でも、これは言わない方がいいですよね?
羽海野(以下、羽):いや、でも、それを言っても面白いかと。
新:それで言うと、我々でよろしいんでしょうかと(笑)
―謙虚なすべりだしですね(笑)。
新:正直な感想をね(笑)。
羽:私も(1月7日の発表の)作者コメントで、ものすごくハードルをあげちゃったので…(笑)。ガッシャン!って。
―確かに、とてもインパクトのあるコメントでした!
羽:でも、あれでシャフトさんを追い詰めてしまったら、どうしよう…って後で思って(笑)。これは新房さんやシャフトさんがかえって困るのでは…と…。
―シャフトさんのスタッフの方々は、原作者である羽海野さんから、あのようなコメントをいただいて、改めて制作に力が入りますと喜んでいらっしゃいました。
羽:発表になって、みんな何て言っているんだろう。みんなが恐いこと言い出したら、私がツイッターでイラストをアップします。私が『ナウシカ』 の2巻の僧正さまになって、「行け!友よ」ってやる予定です(笑)。
―それはこの対談でも、はっきりと載せさせていただきます(笑)。新房監督は、あのコメントをご覧になっていかがでしたか。
新:いや、もう、素晴らしいです。
羽:言い切っておきました。
新:でも、まさに、『荒川アンダー ザ ブリッジ』のスタッフも、『3月のライオン』に参加しますよ。
羽:『荒川(アンダー ザ ブリッジ×ブリッジ)』はエンディングの絵が、かわいかったです。落書きみたいなアニメじゃないような絵で、ああいうのもかわいいなあと思いました。すごい今風の女の子みたいなイラストでした。あれはスネオヘアーさんの歌も、とても素敵で。
―でも、新房監督のおっしゃる、反応が気になるというのは、どういったご理由でしょうか。
新:また叩かれるんじゃないかと(笑)。
羽:もし叩かれるようなことがあったら、私が4コマ漫画などを描いて、みんなを説得するという流れになっています(笑)。
―それだと、見たいから叩くという人達も出そうですが(笑)。
羽:それはなしですね(笑)、それはダメだよって言っておかないと…!!
新:まさに、その反応を受けて、我々でよろしかったんでしょうか?というのもアリですよね(笑)。
羽:いや、本当に(シャフト・新房監督でなければ)アニメ化はなくてもいいかなと思っていましたから。(前作の)『ハチクロ』をとても素敵に作ってもらった思い出1つを抱いて生きていこうと思ってたんですけど(笑)。
―でも、真面目な話、僕らもずっとその思いは、羽海野さんから聞かせていただいていました。
羽:私はシャフトさんのアニメが好きすぎなので、新房監督が叩かれるかも…とおっしゃってもピンとこなくて、「え?どうして?」って思った程で…。
新:今までも、制作がシャフトと発表になった途端、叩かれましたから(笑)。
羽:それはきっと誰がなっても一回そうなるというか、赤ちゃんの感情がまずは喜怒哀楽じゃなくて、ただ興奮という状態から始まるのと一緒で、みんなが一気に興奮して暴れる…という感じなのかもしれませんね。
―なるほど。
新:自分は今ネットとかあまり見ないから直接的には分からないんですけど、まわりのスタッフからね、そういう話をよく聞きます。
―新房監督、シャフトさんには、アニメ業界の中でも、とくに演出が独特なイメージがあるのは間違いないのではないでしょうか。だから、その分どうなるんだろうというドキドキみたいなものを、皆さん抱くのではと思います。
羽:逆に新房さんのファンの人達が、私の漫画をアニメ化するときに、新房さんやシャフトさんの良さを、生かせない原作と思われるんじゃないかという気がします。たとえば小説だったら、(『〈物語〉シリーズ』の)戦場ヶ原さんのお家が鉄骨で書割みたいになっているようなアレンジが出来たり、あと心象風景とかも作ったりも出来るんだけど、『3月のライオン』は舞台も限定してしまっているし、作中の場所も設定してしまっているので、好きにやってもらうことが出来ないのでは?と思って、アニメ化を断られて受けてもらえないとしたら、それが理由になるかもしれないと思っていました。それと女の子がかわいいところも、シャフトさんが作るアニメで私が好きな理由だったのに、『ライオン』だとそこが見れないのかと思うと、私自身が淋しいです。
新:そこが見れないというと?
羽:『〈物語〉シリーズ』だと、私はいつも女の子を見るのが楽しかったんですね、でも、『ライオン』だと割と堅い話なので、女の子にときめくシーンが少ないから、私も自分で残念だなと思って。
新:『〈物語〉シリーズ』とかは、女の子の描き方を、ちょっとあざとくしている部分もありますね。
羽:私はそこが本当に好きなので。キャラクターデザインが渡辺明夫さんじゃないのが淋しいくらいで(笑)。