インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2016年15号
1980年代よりシャフト仕上部で色彩設定や特殊効果を務め、1995年からは制作として作品に参加。以降、シャフト制作作品の企画プロデューサーを担当。2004年に代表取締役に就任する。
1992年に白泉社に入社し、ヤングアニマル編集部配属。ヤングアニマル嵐編集長、花とゆめ編集長を経て、2015年からはヤングアニマルのある第三編集部部長に就任する。
アニプレックス所属のプロデューサーとして、〈物語〉シリーズや『魔法少女まどか☆マギカ』を始め、シャフト制作の多くのタイトルを手掛ける。2016年に代表取締役に就任する
―まずはシャフト×アニプレックス×白泉社という体制で製作に至った経緯についてお聞かせ下さい。羽海野先生と新房監督の初対談では、とにかく羽海野さんがシャフトさんと新房さんの作品がお好きだったからというのは語られているわけですが、それはシャフトさんやアニプレックスさんからしても間違いないことでしょうか。
岩上(以下、岩):まさに、まずは羽海野さんがシャフト×新房作品をお好きというメッセージが僕のところに届いたという感じですね。それがきっかけだと思います。
友田(以下、友):そうなんだよね。この話が決まる前に、それこそ僕のところには各局から星降るようにいい話をいっぱいいただいていたわけですよ。そんな中で、やっぱり羽海野さんが、『化物語』や、『魔法少女まどか☆マギカ』が大好きだから、新房さんがいいですということで、僕の方で最終的にその条件なら(『3月のライオン』のアニメ化を)羽海野さんOKですか?っていう話を預かっていたのね。それが、要するにアニメ化を許諾する条件だったわけだね。それで、今アニメの将棋棋譜作成でも関わってくれている、
指導棋士で囲碁将棋チャンネルに居る田中誠くんが僕のところにやってきて、その条件を聞いて、岩上さんに伝えてくれて。
岩:田中さんが本当に飛び込みみたいな感じで僕のところに来てくれて、友田さん経由の羽海野さんのメッセージをお伝えいただいて。それですぐに、シャフトの久保田社長に「こんな話ありますよ」というのを、ご相談したんですよね。
久保田(以下、久):そうですね。
―飛び込みはさすがに中々ないにせよ、シャフトさんやアニプレックスさんにアニメにして欲しいという話はたくさんおありかと思いますが…。
久:僕のところよりも、岩上さんのところには結構あるんじゃないですかね(笑)。
岩:まあ、こういうのをアニメにしませんかという話はいろんな形でありますけど、今回の場合は、なにせタイトルが『3月のライオン』でしたから。さっき友田さんもおっしゃっていましたけど、アニメ業界的にも、おそらく実写業界も含めて、知らない人はいないほどのタイトルなので。僕らとシャフトさんでいろんな作品をやってきましたけど、言い方が難しいですが、あまりにタイトルが大きすぎてね…。あんまり考えもしていなかったっていうぐらいのタイトルでしたので。
―『3月のライオン』はどこもアニメにしないな…?ぐらいでしたか。
岩:羽海野さんが、シャフト×新房さんでやって欲しいっておっしゃっているのを聞いて、「ああ、そうなんだ」って、すごい意外に思ったぐらいでしたよね。
久:だから、僕も最初に岩上さんからその話を聞いて、タイトルはもちろん存じていましたが、改めて読んでみたんです。それで、これだけの素晴らしい原作を、うちでアニメにできる自信がないぐらい…。
―そう思われましたか。
久:読み返して、とてもとても素晴らしいなあと思ったんですよ。アニメでこの原作の魅力をどこまで表現できるのか…アニメでやる以上は、僕らとしては、やっぱり原作をさらにスケールアップというわけじゃないですけど、アニメならではの映像としてのディテールを上げていかなければいけないといったところで、これだけ原作がすでにかなり完成されているものに対して、何かを足していっていいのだろうかということをすごく、悩んだんですよ。本当にやるべきかどうかっていうことを、ずっとしばらく考えはしました。
岩:やっぱり、僕らアニプレックスもたくさん関わってきましたが、シャフト作品はある種の深夜アニメカルチャー、変化球みたいなタイトルも色々多かったと思いますし、その中でクリエイティブにやってきたと思います。だけど、この『3月のライオン』という作品をやるとしたら、正攻法で王道に行くしかないですよね、と話しましたね。
久:そうですね。真っ向勝負でいかないと、と。
岩:まあ、そのへんでやっぱり、最初は、躊躇するというか、おっ!?っとなった感じはあったと思うんですが。
―選択肢としては、それこそお断りしていただくっていうのもありえたかもしれない中で…。
久:実は1回…。僕の方にお話もらった時にいろいろ悩んで、「岩上さん、やっぱりね、うちではないと思うよ」って。だけどそれから、羽海野さんの熱いメッセージみたいなものも改めて伝わってきて、「やっぱりどうですか?」みたいな話が何度かあったところで、じゃあ、挑戦してみます!という話をさせてもらいました。
友:羽海野さんは本当に、自分の望むスタッフでアニメにならないのであれば、それでいいですって言っていたんだよね。
久:その話を聞いてね。
友:そこは明確に。もちろん他にアニメ業界に素晴らしいスタッフがいるのは知っているんだけど、自分の中でクエスチョンがつくような人に作ってもらって、クエスチョンが増えていくような感じになるんだったら、しなくていいですっていう感じかな。だから、実際アニメ化の話はあっても連載終わった後だろうなあぐらいの気持ちでいたよ。
―先ほど挑戦という言葉がありましたが、今アニメが出来上がりつつあるところで、手応えといいますか、皆さんの中で挑戦してみた結果とまでは言いませんが、途中経過はいかがでしょうか。
友:僕はお願いした以上、基本的にもうお任せするスタンスだけど、仕上がったキャラデザとかを見ると、大変素晴らしいって思わざるえない。そういえば、こないだも、シャフトで色見本を見させていただいた時に、羽海野さんはとても喜んでいて、「なんて素敵なんでしょう」ってことをずっと言っていたんだよね。相当気に入っていたんじゃないかなあって思いましたね。
久:本当に良かったですね。