3月のライオン




2 河西健吾と桐山零

インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2016年21号

―河西さんの零くん役は、オーディションで決まりました。
:オーディションの音源を聴かせていただいたら、どの方の零ちゃんも素晴らしくて、その人なりのこうなるだろうという道が見えるんです。この方はここがいいと思うとメモをとりながら、順番に聴いていて、どなたかお一人を選ばなければならない、どうしたらいいんだろうとなっていたんです。河西さんは一番最後だったんですけど、声を聴いて、あっ、いた!って思いました。零ちゃんの声を聴いたことがあるのは、原作者の私だけじゃないですか。私が頭の中で聴いたことのある零ちゃんの声に近いという感覚で選ばさせていただきました。
:そう言ってもらえたら…いや、もう言葉にならないくらい嬉しいですね。

―零くん、二海堂くん、川本家の3姉妹、島田さんは、スタジオオーディションを行わせていただいて、羽海野さんには後日、その音源を聴いていただきました。
:オーディションを受けた後で、あの錚々たるメンバーだから、自分はないな…と思いながら家に帰りましたから(笑)。
:スタジオオーディションだと、他に誰が受けているとか分かりますよね。
:同じ時間帯に受けに来ている人は、そうですよね。
:お一人お一人、この方は独り言の台詞がよかったとか、ぶっきらぼうなところがいいですとか、メモをとっていたんです。

―イメージに近かった河西さんには、どのようにメモをとられていたんですか。
:(実際にメモを見ながら)心を閉ざしている感じと書いてあります。
一同:爆笑
:でも、モモちゃんに話かけるときだけ優しい声になるとも書いてあります。この心を閉ざしている人が話せるようになっていくのがみたいとメモをとってあります。
:オーディションはどのシーンを?
:将棋を指しているシーンとか、モモちゃんに話かけているシーンとか。林田先生とのやりとりのシーンもありました。

―それらのシーンを、オーディション時に心がけたことはありましたか。
:考えすぎないように、オーディションのときはなるべくフラットに演じようとするのですが、テストの時にモモちゃんを子供扱いしちゃいけないなと思ったんです。そこの目線まで自分がさがってしゃべろうという思いで演じました。
:それも優しすぎなくて、うまく出来ていなかったんですよ。饒舌に言えていなくてたどたどしいんですけど、でも声色は優しくて。
:零ちゃんっぽいですね。

▲話題のオーディションのシーンは原作chapter.25のこちら

:あと将棋のとき、一番ぶっきらぼうだったと書いてあります。指しながら考え事をするじゃないですか。これはどうなんだと自問自答しているときが、とてもよかったですと。一定してボソボソと話している感じが、とても強そうに感じたんです。
:それも、変に感情を入れすぎないところが、零ちゃんっぽいですね。
:将棋は分かっていなかったんですが、先生にそう思っていただけならありがたいです。

―そんな河西さんを、羽海野さんは輝く闇のような声だと。
:聴いているそばから、その言葉が出てきて。でも、皆にそれを言うと、冷やかされるんです。

―二つ名・輝く闇の声って。
一同:爆笑
:かっこいいから、河西くん使っていこう! 闇なのに輝いているんだよ!? この表裏一体な感じ。

―茅野さんや花澤さんも羨ましがっていらっしゃるほどで(笑)。
:私もそんな二つ名ほしいって言われましたからね。
:真っ暗なのに、キラキラ輝いていたんですよ。隅田川の広い夜空が見えたんです。あそこは川が広いから空も広くて、電気も少ないから本当に暗いんですけど、その分きれいで、それにぴったりなイメージでした。

―新房監督も羽海野さんの推す声に賛同なさっていましたね。
:しゃべっていても、前に出していない感じがよかったです。それが印象に残りました。
:共演していても、零ちゃんっぽい繊細さが伝わってきますよ。

―ちなみに河西さん、役が決まったときのことは覚えていらっしゃいますか?
:マネージャーさんから聞かされたんですよ。
:ジャーマネから?
:なんでそんな業界に毒された言い回しを?(笑)
:はい、ジャーマネからの連絡で(笑)、受かったんだ…ええっ!?ってなりました。びっくりしましたね。
:でも、漫画を読むと、自分ならこの役出来そうとかは考えるんですよね。
:ありますね。

―声優さんの職業病でしょうか。
:河西くんは、零くんなら出来そうと思ったんだ?
:スタジオオーディションの前にまずテープオーディションだったんですけど、零ちゃんと二海堂役がありますと聞かされて、やるんだったら零ちゃんだなと思いました。絶対受かるぞとかはなくて、僕だったらこう演じます、ダメだったらそうですよね、くらいの感じで。
:自己愛のにおいがしない声でした。こう見られたいとか、そうは言ってもコミュニケーション能力高いでしょう?というのが、まったく透けてこなかったんです。職業柄、話して人に聴いてもらうはずなのに、こんなに自己愛が低くていいのかな、と思うほどに(笑)。
:さすが輝く闇の声。
一同:爆笑

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