インタビュー&テキスト
白泉社ヤングアニマル編集部 徳留幸輝
初出 ヤングアニマル2017年7号
―アニメの第1シリーズが全話無事放送が終わり、そして最終回とともに第2シリーズが10月から放送されることが発表になりました。再放送も4月から始まるということで、皆さんにはここで第1シリーズを振り返っていただけますでしょうか。
羽海野(以下、羽):本当に嬉しかったです。アニメになって、制作の過程も見させていただいて、あんなにアニメに携わっている方々がいいお仕事を見せて下さって、じゃあ私の方はアニメの人達にどんないいお仕事をお見せ出来るんだろう?と張り合って頑張らねば!という気持ちをいただきました。
岩上(以下、岩):こちらから「3月のライオン」という作品にフィードバック出来ているものがあるのなら、アニメサイドとしても嬉しいですよね。
羽:アニメで実際に声をつけていただくと、あの声の人は何を考えそうだろう?とか、またお話が膨らむんです。西尾維新先生もきっと、それで「〈物語〉シリーズ」の続きの話が、どんどん出てきたのではないかなと思うんですけど。
久保田(以下、久):原作を読んでいても、声優さんの声が聴こえてくるようになりますよね。
羽:重田くんの声を聴いて、原作では今、登場していないのですが、また彼を描かなきゃと思ったり。辻井さんにももっといいダジャレを言わせなきゃとか(笑)。
―このアニメは、主題歌アーティストも話題でしたが、第1クールは、OP/EDともにバンプ・オブ・チキンさんに担当していただき、原作ファンにはおなじみの「ファイター」に加えて、新曲の「アンサー」をご提供下さりました。
羽:物語が始まり走り出す所である「一番重いところ」を、素晴らしい曲でバンプさんに一緒に押していただいて、本当に嬉しかったですし、心強かったです。
―ソニーグループのアニプレックスさんで、主題歌がトイズファクトリーさんのミュージシャンというのは、業界的には異例中の異例なことです。
羽:あれがどんなにすごいことか、一般の視聴者の方にはなかなか解りづらい所ではあると思うのですが、私は実現して下さったアニプレックスさんにもありがとうございます!という気持ちでいっぱいです。
岩:音楽回りに関しては、プロデューサーの淀に任せていたので、自分としては彼女を褒めてあげたい気持ちですが、振り返ってみると、これ以外ありえないというくらいでしたよね。
―第2クールのOPは、「ハチミツとクローバー」のアニメに続いて、YUKIさんに務めていただきました。
羽:10年経ってもう一度一緒にお仕事出来たのが、夢のようでした。10年間一生懸命やってきたから、もう一度出会えたんだと、自分のこの10年を思い返すほど幸せなことで、そして作っていただいた「さよならバイスタンダー」がアニメのオープニングにぴったりと寄り添ってくれる強くて優しい曲で、映像と相まって、零ちゃんは川本家の3姉妹と出会えてこんなに嬉しかったんだということを、私自身も再認識させていただきました。
―対照的に、第2クールのEDの米津玄師さんとは、今回が初めてのお仕事でしたね。
羽:薦めていただいて初めて聴かせていただいたのですが、自分で歌も作って、その動画も作って、発表までなさっているなんて!と、すごい衝撃を受けました。私からもぜひお願いしたいですとなりまして、毎回EDまで必ず見て、そして毎回サビになると私も一緒に歌い出していました。
―一視聴者ですね(笑)
羽:はい、これは大好きなんだということに気づきました(笑)。また、名倉さんに手掛けていただいたEDの映像が、曲とものすごく合っていて、名倉さんはベテランの方、米津さんはお若い方なのに、お二人の感性が合わさると、これまでに見たこともないものが生まれるんだと心躍るものがありました。
久:新房さんからのオーダーで名倉さんに担当していただいたのですが、あの米津さんの歌が流れる90秒を、映像はああいうタッチにしようと思われたのはご自身によるものですね。
羽:大ベテランの名倉さんが、まるで米津さんに負けん気を見せて迎え撃つような映像を作られていて、私自身もすごく刺激になったんです。それで最終話の「ファイター」の絵は、名倉さんや米津さんに私だって遅れをとる訳にはいかないという気持ちで臨ませていただきました。