インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2016年23号
―『3月のライオン』のアフレコでの出来事を、より詳しくお聞かせ下さい。
井:羽海野先生が、アフレコに来て下さるのがありがたくて。
羽:シナリオ会議もうかがえるときは、必ずうかがわせていただいていたんです。新房さんはシナリオ会議もアフレコもその後に皆さんでごはんを食べるので、そこでお話出来るのも楽しいから、よく来てしまいます(笑)
井:河西くんは先生がいらしたら緊張する?
河:最初は、あっ、先生いらっしゃる!って、なりましたね(笑)
―アフレコで皆さんが、『3月のライオン』ならではと感じることはありますか。
井:まず、シャフトさんの作品でこんなにシブいおじさんばかりな作品も今までなかったと思うので、それが私は新鮮ですね。
羽:シャフトさんにアニメにしてほしいですと希望していながら、よく考えたら、3姉妹と香子ちゃんしか女の子のキャラが出てきていませんでした。シャフトさんから女子という武器を取り上げてしまいました。
河:確かに出てこないですね(笑)
―千葉繁さんの相米二おじいちゃんが、またすごくよくて。
羽:千葉さんにやっていただけると知らされたときは、嬉しさのあまり思わず変な声が出ました(笑)
新:神宮寺会長も、玄田哲章さんが演じて下さいましたね。
羽:素敵です。スレッガー中尉!ってなりました。
―大塚明夫さんに、藤本雷堂さんを演じていただきます。
羽:声が太くて年配の役を出来る方を思ったときに、『メタル・ギア・ソリッド』のスネークの声が浮かんで、お願いしました。神宮寺会長や雷堂さんはギャグのシーンも多いんですけど。
新:玄田さんはギャグのシーンも、さすがですよね。
―零くんにも香子さんにも縁の深い後藤役は、東地宏樹さんですね。
河:聞かされたときにもう、ああ、なるほどと思いました。
井:私も前に一緒に朗読劇をやらせていただきましたが、声質から合っていらっしゃいますよね。
―安井さん役は岩田光央さんに演じていただきましたが、岩田さんの収録が終わった後に、羽海野さんは駆け寄られてお礼をお伝えしていましたね。
羽:対局相手にこんな態度で指されたら、そりゃあ零ちゃん、この後ああいう行動にも出たくなるよなという立体的な演技を見事になさって下さったんです。
―そういった棋士達を相手に、零くんは、無口なようで、心の中ではとてもしゃべっているキャラですが、アフレコでは河西さんはどのような思いでしょうか。
河:こんなにしゃべったことはないというくらいしゃべっていますね。何やっているんだろうと思っちゃいそうなぐらいずっと1人で語っているシーンの後に、川本家の3人がぱっと入ってきてくれる場面になると、本当にありがたいです。
羽:1話目から前半のパートと後半のパートで、全然違いましたね。3姉妹が顔をひょいっと出したところで、私もほっとしました。
井:1話の中で空気感が本当にガラッと変わる作品ですよね。
羽:モモちゃんが牛乳のプリンだって言って、顔がドアップになるシーン、すごくかわいく描いていただいていて、久野さんの声も大人の人が出した子供の声じゃなくて、本当に子供がしゃべっているって思わされるくらいで。
井:相米二おじいちゃんと同じ顔になっちゃいましたよね。私はモモちゃんが歌っていた、るんた・るんた・ぶろう・ぶろうのフルが聴きたいです(笑)
―井上さんは、アフレコではどのような思いでいらっしゃいますか。
井:個人的には、皆が楽しそうなシーンを演じていると、うらやましいなって思います(笑)。楽しそうだなーって。
―香子さんが出てくると、途端にシリアスになるところはありますね。
新:3姉妹が出るときは、香子の出番はあんまりないですよね。
―マンガの書き文字の擬態語も台詞と同様に、アフレコではキャストさんにかなり忠実に収録していただいています。
新:擬態語は主には3姉妹役の方々にしていただいているのですが、皆さんの出番がなくいらっしゃらないときもあって。
井:そうですよね。女子が自分以外いなくて、私一人で全部の擬音を演じさせていただいた回もあります。
新:9話ですよね。あの回の擬態語は、井上さんお一人によるものです。
羽:いろんな種類を井上さんがお一人でやって下さって、いっぱい聴けちゃう、なんて楽しい!と思いました。
―井上さんには、香子さんの弟の歩くん役も演じていただいています。
井:音響監督の亀山さんに、知らないうちにキャスティングしていただいていましたので、はい、ではやります!と(笑)。この現場はキャストさんは多くないので、なんなら河西くんも兼ね役を演じていますよね。
河:なるべくばれないように、演じているつもりですが。
井:3姉妹が猫も演じていますからね、私達も負けていられないと(笑)
―猫といえば、将棋ニャー登場の回は野中藍さん、白石涼子さん、阿澄佳奈さん、井口裕香さんと、シャフト作品にも馴染み深い方々のキャスティングになりました。
羽:自分の観ていた『〈物語〉シリーズ』や『絶望先生』や『まどか』に出られていた方々が、『ライオン』にも出て下さいました。
井:あれはかわいかったです。あと井口の桂馬は、ちょっとふざけていたり、キャラで性格が違くて芸が細かい (笑)
―ちなみに将棋ニャーになりきったあまり、アフレコが終わった後も皆さん、会話の語尾にニャーがしばらく残っていたそうです。
一同:爆笑