インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2017年3号
―久野さんのモモちゃん役は、原作者の羽海野さんのたってのご希望でもありました。
羽:オーディションの音源を聴かせていただいて、ああ!モモちゃんいたって思ったんです。「3月のライオン」のアフレコに決まった曜日が、久野さんは他のアニメのお仕事もあってお忙しいとうかがっていたのですが、それでもあきらめきれなくて、何とかなりませんかね?とお願いしてしまいました。
久:ありがとうございます。高校生のとき、髪型がボブカットだったんですけど、友達が私に似てない?ってモモちゃんの絵を見せてくれたことがあって、「3月のライオン」のお話を知る前にモモちゃんとは出会っていたんです。だから、モモちゃん役に決まったときはすごく嬉しかったです。
―具体的に羽海野さんが感じた、久野さん演じるモモちゃんの良さをうかがえますでしょうか。
羽:大人が出している子供の声じゃなくて、子供が出している子供の声を出せる大人なんだ、すごいと。地に足のついた子供という感じがしました。仁王立ちでお腹がぽこっとしている子供という気がするんです。
―実際、久野さんもアフレコが始まって、モモちゃんを記号的ではなく、極めてリアルな子供として演技なさっているのが印象的です。
久:原作を読んでいるとモモちゃんってすっごくかわいいので、作品の中の位置づけ的にどうしてもマスコット的に捉えられる可能性のあるキャラだと感じました。全体を通して見たときにそのような役割もありますが、演じる私からすると、彼女も普通の人間で、毎日生きているし、呼吸もしているし、お腹も空くし、笑ったり泣いたりするだけではなく、それ以外の感情もきちんと持っているんですよね。皆と一緒に生きている、ちゃんとした一人の人間だということを大切にしたいと思ったんです。
―確かに、原作がリアルで、アニメの映像も緻密に作られている中、そういうアプローチじゃないと浮いてしまった気がします。
久:「3月のライオン」は登場人物の感情がすごく丁寧に描かれていますよね。感情の結末ではなく、その気持ちに至るまでの過程が順を追って描かれているから、どのキャラクターにも共感出来るのだと思います。将棋の対局の場面も、自分がまるでその場にいるような緊張感でドキドキしますし。
―モモちゃんも例外ではないと。元々の声質というのも当然おありだと思うのですが、久野さんは大学時代ボランティアサークルにいらして、小さい子と触れ合う機会も多かったとうかがいました。
羽:実際に子供が出す突拍子もない声を、聴いてきたんですね。
久:そうなんですよ。子供がとても好きなんです。学生と子供が公園で一緒に遊んだり、夏にはキャンプに行ったりする素敵なサークルで、子どもたちと密に触れ合っていました。
―そういうモモちゃんの作為的ではない子供ならではの声は、あかりさんやひなちゃんだと遠慮して零くんに言えないことを、天衣無縫なモモちゃんが伝えて物語が大きく動くこともあって、製作陣としてはアニメにするにあたって重視したことでしたが、共演者の方々の久野さんへの印象をお聞かせいただけますでしょうか。
茅:私があかりさんを演じていて感じるモモちゃんへの気持ちと、私個人が久野ちゃんに感じる気持ちがちょっと似ているんです。
久:妹みたいに思ってくださっているってことですか。
茅:そう、香菜ちゃんもそうなんですけど、妹感があるんですよ。声優のお仕事歴では二人の方がずっと先輩なのですが、年齢的には私が一番上で、でもそういうの関係なく、すごく妹みたいに感じさせる何かを不思議に二人は持っているんです。
花:かやのんが、お姉さん気質なのもあると思います。
茅:一人っ子なんですけどね(笑)
―花澤さんはどんな印象でしょうか。
花:久野ちゃんは特別ですね。真面目だし、仕事にも真摯に取り組んでいて、かつ自分でどうこのキャラを表現したいというのがはっきりしていて、それでいて共演者やスタッフの方々と話し合おうとする姿勢もみられて、とっても素敵だなと思って見ています。共演する度…こんな子がうちの事務所にいるのはいいね~!って思います。
一同:爆笑
―共演者の立場でうかがった話が、最後にお偉いさんの目線になりましたが。
花:すみません、おじさんになってしまいました。
羽:花澤さんのそういうところ素敵で、とっても好きです(笑)
花:個人的に一緒にごはんに行ったりするのですが、私は勝手に久野ちゃんとは前世で血が繋がっていたんじゃないかなって思うぐらいほっとけなくて、よく話し合っているんですよ。
久:色々なことをたくさんお話ししてますよね。私は普段、自分のことを話すのがあまり得意ではないのですが、何故か香菜ちゃんには何でも話せちゃうんです。
花:うちのおばあちゃんが、事前特番で一緒に月島に行った映像を観たとき、かやのんが別のお仕事でロケに遅れて合流だったので、それまで二人で歩いていたのですが、その姿を見て、本当の姉妹かと思ったと言ってました(笑)
羽:おばあちゃん、すごい!!(笑)え? だって、孫、増えてますよね!?
久:それは嬉しいですね。
―今のお話をお聞かせいただいて、ご自身達の実際に姉妹にも思えるような感情が、作品に好影響を与えているのが伝わってきました!