3月のライオン




3 茅野愛衣とあかり

インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2017年4号

―まずは茅野さんにまつわるまだ世に出ていないとてもいい話として、キムチのエピソードをお聞かせいただけますでしょうか。
:アフレコの後に、ポッサムキムチを買って家で食べようと思って、購入して帰るところを、羽海野先生に目撃されてしまったんですよね。

―羽海野さんは、アフレコ後に我々と実写映画の方のお仕事に向かうところでした。
:タクシーを拾って、次の仕事場に行こうと思ったら、茅野さんがキムチを下げて歩く後ろ姿をお見かけしたんです。おやおや、何を持っているのかなと話しかけたら、「キムチなんです」ってキムチの内容を説明してくれて、その姿がすごく嬉しそうで、この包みを開いて、ご飯を食べたり、飲んだりするんだなと思ったら、これは楽しいところを見つけてしまったって。夢のような足取りだったんですよ。
:気持ちがもうお酒とキムチに向かっていたんですね。あかりさんに通じるところがありますね。でも、かやのんは割といつもそうで、自分の楽しさをちゃんと知って生きている感じがします。
:いろんな仕事をして、いろんな人に会うんですけど、打ち合わせが終わって失礼しますって言うと、さっきまで微笑んでいた人が固い顔をして後で交差点でばったり会ったりとかがよくあったんです。皆さん、すごい気を遣ってお仕事して下さっているので、自分が負担を強いていないか、いつもずっと心配なんですけど、このお嬢さんはお別れした後も楽しそうに歩いている!ってほっとしたんです。本当にあの後姿には、前にアニメにしていただいてから大分空いているから、今度の皆さんとはちゃんとうまくやれるかしらと私もまだ緊張していたところに、ああ大丈夫だって嬉しくなりました。しかも持っていたのが、ケーキとかじゃなくて、キムチというのがよかったですね(笑)
:そんなこともありましたね。少し恥ずかしいですが、そう言ってもらえて、また、あかりさんを頑張れる気持ちになります。

―あのときは、アフレコが始まってまだ間もなかったですよね。そういうことがあって、その後に発売になった12巻の表紙のあかりさんは茅野さん似になって。
:嬉しくて、表紙を見る度に思い出します。
:茅野さんとお会いして、あの笑顔を見ていたらそれが目にふんわり残って、手から出てきたあかりさんがよく似た笑顔になっていたんですよ。目尻がふにっと下がった可愛さですね。メディアミックスのこれがすごく楽しくて素晴らしいところだと、私は思うんです。私一人の人格が創りだしたキャラクターに本当に生きている人の何かが少しずつ沁みこんで少しずつ膨らんでいくところ。演じてくれる人の声や仕草、まとった空気とか。

―あかりさんというキャラクターには、茅野さんの持っているものが沁み込んで膨らんできているわけですね。
:茅野さんがお酒好きというのを知ってから、あかりさんがお酒好きっていう設定を足さなきゃって思いました。まだ、あかりさん自身が飲んでいるシーンを描けていないんです。私があまり飲めないから、詳しくなくて描けずにいたんですけど、これからは茅野さんに質問して描けばいいんだって。日本酒を多分、林田先生や島田さんと飲んでいて、両脇がバターン、バターンてなっているけど、一人だけスイースイーって飲み続けているっていうのを描きたいんですけど(笑)
:楽しそうですね。いつもバー美咲だと、ドレスじゃないですか。それで太ってきて服が入らないという描写もあったから、和服も見てみたいです。
:合わせがちょっと減るだけでドレスより融通が利くんだけど、でもだんだんその合わせもギリギリになっていくような(笑)

―ではその回では、将棋監修・先崎学九段の下に、お酒監修・茅野愛衣とクレジットさせていただいて (笑)。花澤さんと久野さんは茅野さんとこれまでも共演がおありですが、今作での茅野さんにはどのような印象をお持ちでしょうか。
:音響監督の亀山さんがおっしゃっていたんですけど、台詞におしつけがましさがないんです。おせっかいになってしまいそうな台詞もあるし、ともすれば嫌味に聴こえてしまいそうなシチュエーションであっても、そこをまっすぐだけど柔らかく、ざわっとさせることなく伝えてくれるのが、かやのんの演じるあかりさんの魅力だなって思います。
:モモちゃんはあかりさんのことをお姉ちゃんとしてだけではなく、お母さんのようにも思っています。あかりさんの台詞を聴くと、自分が小さい頃に母にだっこしてもらった時に感じた、母の胸の鼓動や、声から伝わってくる振動を思い出すんです。モモにはあかりさんの声はそういう風に柔らかく聴こえているんだろうなと感じています。
:茅野さんの声から肌ざわりの良さを感じていたんですけど、久野さんはそこまで考えて演じて下さっていたんですね。
:逆に抱っこしているときのモモちゃんの台詞からは、自分の体ごと伝えられている感じがするんですよ。

―茅野さんご自身はあかりさんを演じる上で、心がけていることはありますか。
:私はやっぱり一人っ子なので、妹達がいたらどうかなっていうのはすごい妄想しながら演じています。香菜ちゃんと久野ちゃんがリアルに妹だったら、一緒にああいうことしたいな、こういうことしたいなっていうのを想像しながらやっていますね。ひなちゃんとモモちゃんが妹だったらって考えることもありますし。一気に4人妹が出来たような感じです(笑)

▲妄想のかいあって!? ひなたやモモとも掛け合いもバッチリ!!

3/5

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