インタビュー&テキスト:
白泉社ヤングアニマル編集部・徳留幸輝
初出:ヤングアニマル2017年5号
―花澤さんは川本家の3姉妹役全役でオーディションに臨んでいただきまして、しかもスタジオオーディションの日は、岡山のロケから東京の会場まで駆けつけて下さいました。猫を小脇に抱えて!
花:当日は招き猫ミュージアムで撮影をしてから、伺ったんです。そのミュージアムは館長さんが招き猫が大好きで集めていて、招き猫に絵付けも出来たりするんですよ。そういうスペースもあったり、お土産コーナーもあったりしたので、そこの招き猫を抱えていました(笑)。縁起がいいと思ったので、そこの招き猫をバッグに忍ばせたまま、スタジオに入りました。
―その場でお会いした久野さんにも、お土産を差し上げたとうかがいました。
花:きびだんごを美咲ちゃんにお土産で買っていたんですけど、その場でちょうど会って、私の犬になるかい?って渡しました。
久:ワンって言いました(笑)
茅:きびだんごってことは、モモですものね。
羽:すっごいときめきました。そのエピソードが、私の頭の中で自分の漫画になって、すごい広がっています。棋士の人達同士でやると楽しそうです。
―ゲン担ぎではないですが、ひなちゃんのような中学生を演じるときは、格好も大人っぽいものは避けていらっしゃるそうですね。
花:あんまり自分の格好が演じるキャラとかけ離れると、なんとなく演じづらいんです。
―羽海野さんは、花澤さんが演じられたキャラでも、ひなちゃんとは逆に大人の女性である「言の葉の庭」の雪野先生も大好きでいらっしゃいますけれど。
羽:本当に本当に、あの映画が好きで。あれ?、私、鈍器で心を殴られたんじゃないかな?と思うほど衝撃的に面白かったです。あのときは大人っぽい格好をされていたんですか。
花:そうですね。あと、うまく歩けなくなってしまう人だったじゃないですか。わざと靴を左右逆に履いて、アフレコに臨んでいました。違和感がほしくて。
羽:マリリン・モンローがよちよち歩いた方が、お尻がキュッキュッと動いて、カメラにかわいい歩き方に映るから、ヒールの高さを左右で変えていたというエピソードを思い出しました。忘れて演技するといけないからと。
―花澤さんがひなちゃんを演じる上で、忘れないよう心がけていらっしゃることはありますか。
花:ひなちゃんみたいに自分の思っていることをそのまま伝えられることって、私達の普段の生活だとあまりないと思うんです。だから、そういう真っ直ぐさは、すごく意識しますね。
羽:描くときはいつも、彼女は私の(ONE PIECEの)ルフィだと思っているんです。
花:それを伺って、確かにルフィだ!と思いました。
羽:まだ弱いけれど、芯は強くて、やさしくて、だから零ちゃんを引っ張っていけるんだと思います。彼女まで考えすぎてしまうと、彼に巻き込まれてしまうと思って。
―これまで実際演じていただいた中で、印象に残っているシーンはありますか。
花:お母さんを思って泣くシーンはオーディションでも演じましたし、アフレコ前にも新房監督から頼むよと言われたので、印象に残っています。プレッシャーをかけられて、燃えましたね(笑)
―あのときは羽海野さんもアフレコにいらしていて、涙ぐんでいらっしゃいましたね。
羽:花澤さんの泣く演技は、つられて泣かされます。絵で描いていた自分も、女の子がお母さんを思って泣くことは、こんなにつらいことなんだと思わされました。
花:香子さんと零ちゃんに対して、怒りながら歩くシーンも印象的です。あんまり人のことを悪く言わない子が、何か引っかかることがあったんだなと新たな一面が見られたところだと思うので。
羽:正面切ってのやきもちは、この人が子供だから出来ることなんですよね。意識してしまったらもう言えないことなんですけど。おねいちゃんはきなくさいと思っているだけなんですけど、何あれと口に出して言えるのは彼女だからです。
―3姉妹は大変掛け合いが多いですが、茅野さんと久野さんから見て花澤さんの演じるひなちゃんはどう感じていらっしゃいますか。
茅:私は「3月のライオン」を読んだときから、香菜ちゃんが合っていそうだなと思っていたんです。私があかりさんをオーディションで受けさせていただいたときにも、家で漫画を1巻から読みながらあかりさんの練習をしていたんですけど、ひなちゃんとの会話のシーンは香菜ちゃんとやっているつもりで臨んでいたんです。
久:香菜ちゃんがひなちゃんと重なって見えるところが、本当に多いんです。もちろんお芝居なのですが、香菜ちゃんそのままに感じてしまうところがあります。香菜ちゃんにはよく、相談に乗ってくださって、元気をいただいています。そのときいつも、まるで陽だまりみたいな人だなって思っていて。
羽:花澤さんは、本当に“ひなた”なんですね。
久:そういう素敵な内面がしっかり反映される役を演じていらっしゃる香菜ちゃんの隣で、妹役を演じられるのが幸せだなぁって思います。
羽:私も、これからもっとひなちゃんと花澤さんがだぶっていくだろうなと思うんですけど、お二人からも内面が重なるところもあると聞いて、とても心強いです。ますます、花澤さんの声を思い浮かべながら、ひなちゃんを一生懸命描こうと思いました。
―活字でも伝わるように書きますと、花澤さんは今、共演者と原作者の相次ぐ激賞に、顔を赤くして、俯いていらっしゃいますが(笑)。
花:ますます彼女の正義感と真っ直ぐなところを、素敵に感じられるように演じないととすごく感じていますので、頑張ります!