3月のライオン

Interview5 作るものへの分け隔てない思い

:でも、『まどか』を見て『化物語』を見て、もう新房さんは漫画原作のアニメを引き受けるメリットはないんじゃないかなあ…とも思っていたんです。小説みたいに実際の絵がないものとか、『まどか』みたいなオリジナルのものをやっていく時期に入ってしまって、やってもらえないんだろうなとは思っていました。
:そこは逆なんです。2000年に『ソウルテイカー』というのと『コゼットの肖像』というオリジナルをやったので、オリジナルの方が過去やっていたんです。
:そうなんですね。でも、『まどか』を見ちゃったら、こんな自由ですごいものを作っちゃったら、もう他人の漫画原作を動かすのは嫌じゃないのかなと。
:いつも思っているのは、自分は作家ではないので、そこに分け隔てはないんですよ。
:なるほど。
:それよりも、売れるもの、話題になるものをやりたいという思いが、ある時期を経て、どんどん強くなっていきました。
:その時期は、『まどか』の頃ですか?
:いえ、『ソウルテイカー』『コゼット』とかをやったときですね。頑張ったけど、思ったほどには話題にはならなかったんですよ。話題になってくれれば、やっぱりスタッフ達の労もねぎらう形になるんじゃないかなあと思っていて。話題になるもの、みんなが喜んでくれるものを…というところに気持ちが向かっていっている時だったから、それで原作物ありの作品とかもシャフトに来てやったんです。そういう意味で言うと、その後って、ずっと原作物を、『絶望先生』もそうですけど、『ぱにぽに』とか『ネギま!?』とか『ひだまり』 だったりね、そういうのをずっとやってきて、久々に『まどか』はオリジナルをやったという経緯ですね。たまたまヒットしたからよかったものの、ヒットしなかったらまたオリジナルの目は消えてしまうのかもという感覚です。(オリジナルは)ちょっとそういう意味では、消極的かもしれません。
:やってもらえないんだろうな、そうだよな…と思っていたところで、新房さんとシャフトさんに作っていただけることになって、私は今とても幸せです。

Interview6 お互いの作品への出会い

―『3月のライオン』アニメ化のお話が届いたとき、新房監督はどう思われましたか?
:他のがどうこうというのではなくて、ビッグタイトルだから、新連載が始まるときにも、電車の中吊りの広告で見ていて、それもすごい印象的だったし、「えっ、あれが自分達のところに話が来たの?」と思って驚きました。
:ヤングアニマルで始まるときの広告ですね。

▲新房監督も見ていた連載告知ポスター

:前の作品の『ハチクロ』から将棋なんだ!と、すごい不思議に思ったんですよ。
:監督は『ハチクロ』は読んで下さったことはありますか?
:あります。だから(『ハチクロ』には)ふんわりとしたイメージ、内々はともかく雰囲気は学生達が主人公で、間口が広い感じを狙っているなと思っていて、でも、その次が何で将棋なの?と。
:『ハチクロ』が終わった後、私はフリーだったので、色んな出版社の人から、『ハチクロ』みたいなものをもう一回描いて下さいというオーダーをいっぱいいただいて、でも自分としては、同じようなものを描いて、もし外したらその時は一発屋って言われて、もう3本目はないなと思ったんです。だから2本目は攻めるもの、全然違う堅いものを描こう!! そうしたら、外れても前のめりな感じが残る。その上で3本目でもう一度、学生ものとかをやろうと思っていたんです。でも、(『3月のライオン』を)始めたら楽しくなって、やめられなくなってしまいました。
:中吊りのポスターを見たとき、すごい違和感があって、この絵は何だろうと、しかも題材が何で将棋なんだろうと。僕も今は自分で将棋は指さないけど、小学校の頃までは好きで指していたから、(ポスターを見て)不思議になるくらい将棋に関しては思い出があったんですよ。

―羽海野さんが新房監督・シャフトさんの作品を一番最初に触れたきっかけというのは?
:『絶望先生』でした。次が『荒川』かな。私の姪が『絶望先生』を大好きだったんですよ。夢中になって見ていたので、姪に教わって一緒になって見始めました。その後、中村光ちゃんとお友達になったので、『荒川』がアニメ化されるときには、「新房監督なんだ、いいなー」って…。『荒川』見て思ったのですが、『絶望先生』もそうなんですけど、ギャグのテンポがすごいよかったんです。ちゃんと笑えるようになっていて。
:それは自分というより、シャフト内の演出陣の力ですよ。
:ちゃんとギャグをギャグとして笑えるようになっているアニメで、本当に笑っちゃうんです。アニメでも漫画でもギャグとシリアス両方出来る人ってあんまりいないなって思うんですけど、自分は漫画で両方描きたかったから。そのシャフトの演出の方は、『ライオン』にも携わって下さるのですか。
:ええ、携わりますよ。
:(嬉しくて)泣きます。ギャグが面白いのはいいなって本当に思います。

―ギャグのテンポの良さも、羽海野さんが新房監督とシャフトさんを希望された理由なんですね。
:まず、遠くじゃなくて、目の前で誰かが何かをやってくれているように見えるところ、離れた所から聞いているんじゃなくて、その場で居合わせたような気にしてくるのがすごくて、そこが好きなところです。さらにギャグが面白かったので!

3/7

このページをシェアする